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2008.03.04

大学で発達障害学生を支援すること

ようやく日本でも大学において発達障害学生を支援する必要性が認められはじめたようで。

しかし、実態を直視するならば、大学に入るまで診断を受けずに放置されていた(あるいは、診断を認めずに放置していた)ということが問題を大きくしていて、早期診断と早期支援が重要だと、改めて思わされるわけです。

発達障害の学生の人づきあいを大学が支援 京大など

2008年02月23日 

各地の大学で近年、自閉症やアスペルガー症候群など発達障害とみられる学生が目立っている。人間関係などに難しさを抱え、大学に通わなくなる学生も。か かわる全教員が特性を理解し支える京都大学、インターネットによる支援体制をつくる富山大学など、フォローに乗り出す大学が出始めた。

京都大学では、高機能自閉症の3回生男子(21)を、所属学部の教職員やカウンセラーがチームで支えてきた。

 「遠回しな表現を理解できません」「否定的な言葉かけに過剰反応します」。合格後すぐ、母親は、成育歴や問題点をファイルにまとめて、理解を求めた。大学側は、高校の担任からも話を聞き、相談役を決めた。情報は、かかわる全教職員で共有した。

 1回生の6月、この学生が教務課に退学届を手に飛び込んできた。「もう京大生としてやっていけない」。語学で音読がよくできていないと指摘され、パニック状態だった。1時間ほどじっくりと聴くと、落ち着いた。

 相談役の職員(56)は、今も年6回面接をする。学生は「いつでも相談できて助かった」。京大では今後、様々な障害のある学生の支援を、大学全体で継続して進める学生センター設置を検討中だ。

高知大学は06年度から、入学時の健康診断で自閉症傾向が強ければ、保健管理センターの面接に誘う。早期コンタクトで、気軽に相談できる体制づくりを狙う。発達障害が疑われる学生は、06、07年度新入生でそれぞれ複数。また昨年度、センターへ相談に来た中にも十数人いた。

富山大学は4月、学生と教職員向けのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を立ち上げる。面と向かっての相談が苦手な学生向けに、カウンセラーとネット上でやりとりできる。

 「孤立させたくない」と斎藤清二保健管理センター長(57)。年100人ほどの新規相談者中、昨年は1〜2割に発達障害が疑われたという。

多くは、過去に診断を受けていない。「知的レベルが高く、気づかれずに来た」と斎藤さん。

 国立特別支援教育総合研究所などが05年度、全国の大学や短大の相談担当者らに実施した調査では、過去5年間で約760校のうち3割が、発達障害の診断があるか疑いのある学生の相談を受けていた。

 岐阜大学医学部・高岡健准教授(児童精神医学)は「発達障害の人にとって必要なのは、障害の理解に基づいて生活しやすい環境を整えるということ。今後もこうした視点による、取り組みを広げていく必要がある」と話す。

 《発達障害》 (1)自閉症やアスペルガー症候群を含む「広汎性発達障害」(2)落ち着きがない「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」(3)読み書きや計算など特定分野が困難な「学習障害(LD)」など。脳の機能障害が原因と考えられている。文部科学省の02年調査では、普通学級に通う小中学生の6.3%に発達障害の可能性があるとされた。05年4月、早期発見と支援を国・自治体の責務とする発達障害者支援法が施行された。

この記事を読んでみれば、大学で学生生活につまずいてからその大学で初めて発達障害の疑いや診断がなされるというような状況が見えてきます。

これでは、マスメディアが大きく取り上げるような凶悪な事件が起きてから、その後の取り調べや鑑定によって「元々、発達障害があった」と診断されるようなものと同じではありませんか。

診断は医療機関でなされるものです。「サスペクト(発達障害の疑いや可能性)」くらいなら、児童相談所や保健所などの公的機関でもできます。

だから、医療機関や公的相談機関での発達障害の疑いや診断技術を向上していくことのほうが第一に重要なのです。この一番重要なことに触れずに、大学で支援を拡げていこうというのは、本末転倒というものでしょう。マスコミは、こういうところまで踏み込んでいないし、学者もここまで踏み込んで発言する人はいないようですね。

大学生になるまで放ったらかしにされた発達障害のある青年の多くは、すでに多く傷ついていたりするのです。

一方で、医療機関、児相、保健所などが、早期の診断(サスペクトを含む)をしにくい他の要因も分かっているので、それを斟酌すれば一方的にこれらの診断の遅れを非難するのも気の毒な面があるんですね。

「診断しにくくしている要因」について解説しようと思いましたが、やっぱりやめときます。ここまで書いたんですから、ちょっと考えてみて下さい。ヒントは「多くの親も悪い」ということです。ヒントというか、ほとんど答えですね。

自分の教え子の中には、大学院まで修了した青年もいます。友達は多くはありませんが、今では真面目な社会人です。他にも、大学や専門学校に進学した子もいます。この教え子らには、やはり知的な遅れはないのですが、早期から自分の支援を親子共々受けていたということです。

 

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     など。

Posted by 奥田健次 特別支援教育 |