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2008.02.29

【出版業界】新風舎こそ、MOTTAINAI。【冬の時代】

そう。そうなんです。

書籍販売業界で何が一番困るかって。そりゃ、倉庫代なんですよ。

自分の親戚にちょっとした小説家がいたんですが、出版業界不況のためにちゃんとした小説を書いても、「初版すべて買い取り」とかの厳しい契約だったりするんです。

新風舎の在庫本、29日から断裁・破棄へ

2008.2.28 20:12

 破産手続きに入った出版社「新風舎」(東京都港区)の倉庫に眠る書籍500万冊以上がきょう29日から順次、断裁、廃棄処分される。29日で倉庫の使用期限が切れるため。同社の倉庫料と税負担は月額2000万円に達し、経営を圧迫する一因となっていた。

 倉庫に眠る書籍はほとんどが自費出版本。関係者によると、新風舎の出版システムは、費用を負担した著者に部数の約1割を納品し、残りを販売するというもの。新風舎は刊行した出版物を保管するため、倉庫会社3社と契約しており、出版物を絶版にしない方針を取っていたため在庫がより積み上がったという。

 1月に再建を断念した後、保全管理人の指示で、希望すれば定価の2割で著者に販売されることになり、同社は「一人でも多く引き取ってほしい」と呼びかけた。倉庫会社も臨時のパート職員を雇うなどして出荷作業に取り組んだが、とうとう時間切れ。「出荷されたのは(当初あった約600万冊の)1割ぐらい」(関係者)という。

 千葉県にある倉庫会社の担当者は「本は古紙として、ビニールカバーやCD付きの本は産業廃棄物として処分する。これまで一冊一冊、出荷や返本に対応してきたが、(新風舎の破産で)屋台骨が揺らぐほどの影響を受けている。事情を理解してほしい」と話す。

 保全管理人の川島英明弁護士は「廃棄は残念だが、倉庫をいつまでも使うわけにもいかず、やむを得ない。適正に破産処理を進めたい」としている。(牛田久美)

この新風舎という会社は、本当にひどい会社でした。

今だから言いますけど、自分のところにもセールスの声がかかったことがあるんですわ。「シンプーシャ? 聞いたことねえなあ」と首を傾げつつ、若い社員のセールストークを聞いてみると、要するに「自費出版をしませんか」という勧誘だったわけ。自費出版でも内容が良ければ出版社と折半する契約もあるとか何とか、ひたすら甘いことを言っていたなあ。

自分ですが、「あのー、専門書ではあるんですが、私の出版した書籍で20,000冊到達したものがあるんですけどー」と言ってさしあげると、「え!! 20,000冊ですか!?」と度肝を抜かれた様子の担当者。

なんか怪しかったので、試しに「自費出版でないなら、そちらで出版を検討してみてもよろしいですけど」と鎌を掛けてみたんですわ(もちろん、ちと上から目線でね;笑)。そしたら、結局のところ「うちで扱えそうな分野ではなさそうですが、可能性があればまた後日連絡します」と。結局、案の定、後日の連絡なんかなーんもありませなんだ(笑)。

それで、自分は「あー、あのシャンプーシだかセンプーキだかっていう本屋、自費出版で儲けようとしとるな!」と破産発覚の1年以上前に見抜いていたわけです(そーいや、ちょっと前、宝石屋の破産も見抜いたし、NOVAも予想通りでした)。

発達心理学的な話しをすれば、人間がある程度の年齢になってくると次世代に何かを残したいという欲求が強くなる傾向があります。その一つが、「1冊の本に何かを残したい」という具体的な欲求として現れるんでしょう。だから、実際にこのチンプーシャに甘いことを言われて契約してしまった方は、発達段階的にはそういう熟年世代が多いみたいだし、本の中身も自叙伝とかが多かったみたいですね。さもありなん。

そういう熟年世代や壮年世代の欲求につけ込んだんでしょう。「夢を叶えます」などと甘い言葉をささやいたんでしょうな。

しかしまあ、常識的には冒頭にも書いたように、まあまあちょっとした小説家でも厳しい契約をさせられてるんですよ。

コレ、ほとんど世間の人は知らないんですよねー。

覚えといてね、奥さん。芥川賞とか直木賞の候補作ですら、初版部数は500冊とかなんですよ。たった500冊。んで、賞を取ったとしても細かいペースで増刷していくんですわ。かなり小刻みなんです(だから奥付に「増版53刷」と書いてあっても部数的にはそれほど大したことはない)。1刷あたりの部数がかなり少ないからね。なんでかっていうと、だから冒頭にも書いたように絶対に在庫を残したくないんです。出版社も著者も。

今ね、それくらい紙が売れない時代なんです。有名な作家や評論家でも1万冊売れたら出版社は満足してくれる時代なんですよ。

そんなわけで、これからまた別の会社で自費出版をしようと考えておられる方。芥川や直木のノミネート作ですら1000冊未満なんですから、1000冊実売できるなどと思わないように気をつけて下さいね。麒麟・田村のビンボー本とか150万冊売れて話題になるのは、毎年毎年、星の数ほど出版されている書籍のうちの、ほんの一握りなんですからね。

そーいや、むかし「奥田先生も一般書を書かれてメジャーデビューしてはどうですか?」「専門書だけではマイナーですよ」などと何も知らないブログの読者に言われたことがあるけども、こういう現実を知った上でそういうことを言っていただきたいものです。専門書で確実にそれを必要としている人に買ってもらったほうが何百倍も良いんです。一度たりとも在庫を買わされたりしたことなんかないもん。

マイナー、メジャーというのも分からんし。

自分は、自分に与えられた仕事を誰にも邪魔されずにやっていくだけ。

 

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Posted by 奥田健次 社会, 経済・政治・国際 |