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2007.11.12

アカハラ覚え書き1

アカハラ(アカデミック・ハラスメント)事件の覚え書き。

第3部・科学者の倫理とは/3 アカデミック・ハラスメント

<社会の中へ>

 ◇精神的圧迫でうつに

 ◇予算・人事掌握…上司絶大、逆らえず

 応用物理学を専攻する国立大准教授の40代男性は最近、ようやく体調が戻りつつあるのを感じている。以前は朝、研究室に来て、上着をハンガーにかけるのも、おっくうだった。前に在籍した大学で、教授から嫌がらせを受け、うつ状態になったためだった。

 企業研究者だったとき、大学院時代に知り合った教授から「別の大学に移る。どうしても一緒に来てほしい」と請われ、誘いを受けた。助手として赴任した初日、勤務時間を尋ねると、教授は「ここは企業とは違う。勤務時間だけ働けばいいと思ったら大間違いだ」と、いきなり怒鳴りつけられた。以来、学生の前で、たびたび怒鳴られた。

 独力で論文を書き上げたある日。研究室の外の廊下で教授から「場所代だから、著者名に(教授の名前を)入れるのは当然だろう」と告げられた。反論を許さない口調に、しぶしぶ応じたものの不満だった。論文内容に関する議論など、教授とはまったくなかった。

 教授は男性が親しくしていた学生らにも、いいがかりをつけ攻撃するようになった。男性は学生との接触を避けた。精神的な圧迫感で研究どころではなく、通院するようになった。

 男性は友人から今の大学が教員を求めていることを聞き、応募して採用された。「大学は研究室単位で動いており、予算と人事権を握る教授は中小企業の社長のようなものだ。研究室の問題は外の人が口出しできない」と訴える。

 この教授は取材に対し、「コメントできない」などと話している。

  ■   ■

 アカデミック・ハラスメント(アカハラ)とは、「教育・研究現場での権力を利用した嫌がらせ」だ。多くの論文を書くことは、科学者の業績や評価につながる。研究に関与していなくても共著者として論文に名前が載れば、成果とみなされる。共著者を強要し、研究成果を横取りするのは、アカハラの典型例だ。

 NPO法人「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」代表理事の御輿(おごし)久美子・奈良県立医科大助教らが、04年にまとめた准教授、講師、助教を対象にしたアンケート(回答者931人)によると、研究論文の作成で、1割が「上司に論文の筆頭著者(ファースト・オーサー)をとられたことがある」と答えた。筆頭著者を他の人に譲るように強要されたという回答も1割近くあった。

 「上司から実験データの改ざんや捏造(ねつぞう)を強要された」という教員もおり、権力関係が論文捏造の背景になっていることもうかがわせた。「自分で取った研究費が教授の研究費として使われてしまう」「任期付きの職のため、次のポストを探さなければならないが、上司に推薦状を依頼しても書いてもらえない」という訴えもあった。

  ■   ■

 同ネットワークには今年6月までの1年間、延べ約1200件の相談が全国から寄せられた。御輿さんは、最近の成果主義やプロジェクトの大型化が、アカハラを誘発しやすくしているのではないかと懸念する。多額の公的研究費を受ける研究室からの相談が目立っているからだ。

 御輿さんは「多額の資金を得れば、それに見合う成果が求められ、若手研究者や大学院生は、上から決められた仕事を長時間強いられる。思うようなデータが出ないと、辞めろと叱責(しっせき)される。こうした環境では、アカハラが連鎖的に拡大しかねず、捏造などの不正を招くかもしれない。悪循環だ」と指摘する。【下桐実雅子】

 ◇「身近な相談場所必要」

 過去に所属した研究機関でアカハラを受けたと公表している若山信子さん(65)=茨城県つくば市=は「被害者は自分に落ち度があるのではないかと感じ、泣き寝入りしてしまう。こじれる前に解決できる身近な相談場所が必要だ」と語る。セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に続き、アカハラの相談窓口をつくる大学が増えてきた。

 しかし、いくつかのアカハラ訴訟を担当してきた若林実弁護士(第2東京弁護士会)は「大学に相談体制があっても、申し立てることによって2次的な嫌がらせを受けたり、研究がストップしてしまうなど、被害者は不利な状況に置かれがちだ。身内をかばうので、隠ぺいしているのではないかとみられるケースもあり、自浄能力が十分でない」と厳しい見方だ。

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 <大学などがアカハラを認めた最近の主な例>

07年10月 大阪市立大教授が博士論文の指導をしていた大学院生に対し、一方的に学生指導の補佐から外す。停職3カ月

07年 6月 広島工業大准教授が国の研究費を不正使用。卒論作成時期の学生を学外調査に動員した。停職6カ月。准教授は依願退職

06年 1月 福岡県立大教員3人が、教授による研究や授業妨害、退職強要があったとして、人権救済を申し立てた。福岡法務局が人権侵害を一部認め、教授に反省を促す措置

05年 7月 山口大助教授が学生にプリンターのトナー代を要求し、研究員からは給料の10%を出すように強要。戒告処分

05年 6月 九州大助教授が大学院生に理不尽な叱責や長時間の説教を繰り返した。戒告処分

    同  岡山大教授が学生に、自分の実験データ解釈を強制しようとして恐怖や不安を与えた。学生のデータをもとに了承を得ず共著で論文を発表しようとした。減給処分

04年11月 九州大教授が20年以上にわたり大学院生の自宅に電話し専攻の変更を迫った。セクハラ行為も。諭旨免職

毎日新聞 2007年11月11日 東京朝刊

Posted by 奥田健次 いじめ・ハラスメント, 教育, 社会 |