【最高裁判決】教授への村八分は違法【アカハラ訴訟】
現役の教授に対して、一方的に講義を取り上げて事務職にさせた事件が、最高裁判決によって違法と認められた。
7月13日18時51分配信 毎日新聞
ミニコミ紙上の発言などを理由に不当な戒告処分を受けたとして、鈴鹿国際大学(三重県鈴鹿市)の久保憲一教授が大学側を相手に、処分の無効確認と500万円の賠償を求めた訴訟の上告審判決が13日、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)であった。小法廷は「大学側の処分に合理的理由はなく、懲戒権や業務命令権の乱用」と述べ、請求を棄却した2審・名古屋高裁判決(05年11月)を破棄、処分を無効とした上で大学側に200万円の支払いを命じた。
判決によると、99年にミニコミ紙に掲載された久保教授の発言を巡り、教授会が「教授として不適切」と辞職を求める決議をし、大学は戒告処分とした。辞職に応じなかったため、事務職への異動と教育活動の禁止を命じるなどした。小法廷は大学側の一連の行為について「制裁的意図に基づく差別的取り扱いとみられてもやむを得ない」と指摘した。
1審・津地裁は04年に教授側勝訴としたが、2審では「処分は妥当」として教授側が逆転敗訴していた。【高倉友彰】
この事件。まあ、要するにパワハラ(パワーハラスメント)またはアカハラ(アカデミックハラスメント)なんよね。最高裁は至極まともな判決を下した。
ところで、毎日新聞は具体的にミニコミ紙の内容を書いていない。
ミニコミ紙の発言内容は、こちらから。
(引用開始)
−三重県での取り組みですが、三重県人権センターを調査されたよ
うですがどのような問題点がありましたか。
久保−市民運動家の山野世志満さんらと行きましたが、想像以上にひどいものでした。人権センターといってもほとんどが部落問題で占められている。あとの二割ほどが反日、自虐史ですね。どういう子どもや日本人を育てようとしているのかと疑問に感じるような施設です。このセンターで真面目に勉強する子どもがいたら、将来が本当に心配になります。このような施設を公費で建設したこと自体疑問ですね。−東京都が計画している平和祈念館問題と何か共通するものを感じたということですか。
久保−ほとんどオーバーラップすると思います。東京都議会の土屋議員は大学で一年後輩ですが、彼の尽力で計画を凍結させました。人権センター問題はこれから監査請求とか情報公開などで実態を明らかにしていきたいと思います。久保教授のインタビューに対する発言が問題だとして、享栄学園は久保教授の解任を決定した。しかし久保教授はこのインタビューの以前に、すでに人権センター問題を取り上げて、報道されている。
平成十一年八月十二日に、久保教授(当時助教授)らメンバー六人が人権センターを訪れ、馬場佐所長と話し合っていることが本紙八月二十日号で掲載されている。
久保教授らは「人権センターになっていない。実態は同和解放センターだ。もっと人権全般についての啓発をしてほしい」「戦争の扱いが偏向している。蔵書や展示に日本軍や日本人の加害ばかりが目立つ。日本人が受けた被害についてまったく触れられていない。戦争は最大の人権侵害であり、一方が絶対に正しく、一方が悪いというものではない。事実は事実としてバランスの取れた啓発をしてほしい」と要望している。これに対して馬場所長は「人権センターは誕生してまだ三年目だ。これまでの長い同和行政の流れがある。そのため同和関係の図書やビデオが多い。今後、内容を整理するなかで検討したい」「戦争についての蔵書やビデオなどはバランスの取れた内容にするよう努力している。展示についても公正なものにするよう配慮したい」と答えている。
また久保教授は、ほかのメンバーらと十一月十九日にも人権センターを訪れ、展示内容や図書内容が自虐的だとして改善を求めている。
(この件は本紙と産経新聞が報道した)。
報道記事を通して、久保教授の一連の発言の内容が終始一貫していることが分かる。
しかも鈴鹿国際大学の教授会は十月一日付けで、久保助教授(当時)の教授への昇任を満場一致で決めている。
「なぜいま頃になって問題になるのか。それも大学内部だけで−。まさに青天の霹靂(へきれき)の思いだ。最近になって教授と本部事務員の兼務の辞令が送られてきたが、教授会への出席や講義も認めないという。本当に人を愚弄したやり方だと思う」と久保教授は語っている。
(引用おわり)
要するに、地元の人権センターの内容について疑問視した意見をインタビュー形式で掲載されたということ。教授の主張内容も至極妥当である。ところが、これで「嫌がらせ」が起こりえるということを、一般の人は理解できないかもしれない。しかし、大学という現場ではある。
教授側の「請求原因(一)」を見てみよう。一部引用。
一・辞職を求める教授会の決議
鈴鹿国際大学学長勝田吉太郎(以下、勝田という)、学部長被告武部、田村晃康教授、中澤巷一教授、教務部長被告中野の五名で構成する「適格性審査委員会」が、平成十一年十二月十七日に「久保教授は本学教員としては不適切な人物と判断せざるを得ず、辞職してもらうのが適当との結論」に達したとして、教授会は、平成十一年十二月二十二日開催の臨時教授会において、「久保憲一教授は本学教員としては不適格であり、辞職を求める」という決議をなした(甲第二号証)。
「請求原因(七)」では、さらに嫌がらせの内容が明らかに。一部引用。
四、それまで、何ら制限されることなく、研究室を使用し、授業等の教育活動や教授会及び委員会等への出席ができた原告に対し、教授会が突然、正当な理由もなく、「授業等一切の教育活動をさせない」ということは原告に「教員として不適格」という烙印を押すことであり、「教授会及び委員会等への出席はさせない」ということは、いわば原告を「村八分」にすることであり、ともに陰湿な「いじめ」以外の何者でもない。
「請求原因(十一)」では、さらに嫌がらせの内容が露骨に。一部引用。
さらに被告享栄学園は、原告に対し、「学園本部事務職員と鈴鹿国際大学教授の兼務を命ずる」との辞令(甲第十六号証)の発令に伴い、平成十二年二月十四日付連絡書(甲第十一号証)をもって、なんら理由を示さずに「鈴鹿国際大学の教授会、委員会への出席、その他の教育的諸活動はお辞め下さい」、「法人本部佐藤久雄事務局長より指示」を受けて、鈴鹿国際大学短期大学部二号館において「学園史の英訳業務」「海外留学生の募集事務」をせよと通知(業務命令)した。
教授の職務は、学生の教授と指導、研究であるのに、被告享栄学園は、鈴鹿国際大学教授たる原告に対し、その本質的職務である「教育的諸活動」をしてはならないと命じ、教授会の構成メンバーであるのに、教授会に出席してはならないと命じ、本来的な上司でもない「法人事務局長」の指揮のもとで機械的作業に従事せよと命じたのである。
医局の嫌がらせを描いた小説『白い巨塔』よりも、えげつない。自分の専門分野の一つである「いじめ・ハラスメント」。他にも、山ほどアカデミックハラスメントの事例を知っている。
実際に、アカハラに遭っている人は、NPOアカデミックハラスメントをなくすネットワークに相談してみてください。
なかなか表に出てこないだけで、大学ではまだまだ信じられないほどの露骨なハラスメントが埋もれているのだ。こうした嫌がらせが違法であるという認識を、もっと日本人は自覚せねばならないだろう。
その意味で、今回の最高裁判決はとても大きな意義のある判決であった。
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など多数。
Posted by 奥田健次 いじめ・ハラスメント | Permalink
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