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2007.06.19

ドメスティックバイオレンス(DV)について

今日は午前中の講義のトピックで、ドメスティックバイオレンス(以下、DV)について資料を見せつつ学生向けの話題を提供した。

自分のところは発達障害についての教育相談が専門なのに、ここ数年でDVの問題を抱えながら来所する親御さんが増えている。そんな状況では子どもへの治療どころではなくなるので、まずは夫婦の問題について解消するよう他の相談機関を紹介することにしている。

以下、講義の内容を一部紹介。

日本社会では「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言われていて、近親者間の暴力に警察が介入するのは消極的だった。

こういうところは、日本のテレビドラマや映画にも反映されている。思い出されるシーンとしては、女性が「私はもう、死んだ方がいいんでしょ! そうよ、私なんて必要ないんだわ! いいわよ、もう!」なんて興奮すると、目に余った男性が平手打ち。女性は「痛い、何するのよ!」などと怒るが、仕舞いには女性のほうが「ごめんなさい!」とか言って涙ながらに抱きつくシーン。

これが、アメリカのホームドラマだと笑える結末になる。男性が平手打ちするところまでは同じ。ところが、平手打ちされた女性の次のセリフが違う。「痛い、何するのよ! 精神病院で治療を受けてよ!」である。そして、本当にそのドラマは翌週から平手打ちした男性が、裁判を受けたり精神病院で集団療法を受ける展開になっていく。これ、本当の話。

まあ、これほど「近親者間の暴力」については文化差があるわけ。

でも、日本でもご存じの通り「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法、配偶者暴力防止法)」が平成13年10月に施行され、さらに「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律」が、平成16年12月に施行された。文化差はあるにしても、日本でもDV被害を許さないという考え方が定着してきた。

よく知られているのは、アメリカの心理学者ウォーカーの示したDVのサイクル。画像をクリックすれば拡大されます。

Dvcycle_2 「暴力の爆発期」・・・加害者は怒りのコントロールができなくなり、激しい暴力を振るってしまう。一方、被害者は緊張・恐怖・無力感を感じ、相手を受け入れてしまう。

「ハネムーン期」・・・加害者は「二度と暴力は振るわない」と誓い、実際に優しくなる。加害者が土下座したり泣いたりしながら、またプレゼントしてくれたりするので、被害者は今度こそ相手は変わるのではと期待する。

「暴力の蓄積期」・・・加害者の緊張が徐々に高まってくる。イライラしたりピリピリした雰囲気が現れ始め、被害者もそれを感じ取って緊張する。

ケースによっては、この「ハネムーン期」を経ずに「暴力の爆発」と「暴力の蓄積」を繰り返すこともある。

自分の経験では、DVについてはなるべく関わりたくない。お金を積まれてもお断りしたい。被害者は弁護士に相談するべきで、加害者は精神病院に通院するべきだと思う。

DV被害者への支援は、とても疲れるものだ。助けて欲しいと相談を持ちかけながら、こちらが救いの手を差しのばすと、「やっぱり○○○○のことを考えると○○○○○だから、もう少し様子を見たい」というパターンの多いこと。1年くらい相談に乗っても、自分と我が子を守るために弁護士に相談する決断をするまで何年もかかる場合が多い。

自分がDVを専門に仕事しているなら請け負うだろうが、この数年の時間に犠牲になるのは子どもらである。それを見るのが忍びない。いくら「放置していたら子どもにとって良くないですよ」と助言したところで、被害者はそれが分かっていてもすぐに行動に移せないことが多い。子どものこと、経済的な問題、実家の親の性格など、被害者を悩ませる事柄がいろいろあるのだ。

それほどDVというものは、被害者の気力・エネルギーを奪うものだといえる。

ちなみに、DVは身体的暴力に限らず、性的暴力、心理的暴力、言葉の暴力、経済的暴力、社会的隔離なども含まれる。

最近は、女性から男性への暴力も増えている。リビングにいる旦那にキャベツを投げるとか(結構、痛いと思う)、ビールを頭からぶっかけるとか(結構、冷たいと思う)、職場に電話して中傷するとか(結構、恥ずかしいと思う)、そういった話も聞く。自分は躊躇せず「そりゃアナタ、病気ですぜ」とキッパリと忠告して、精神科の受診を真剣に勧めている。

夫婦間において「イライラ感情に基づく暴力」を1発でも与えてしまったら、加害者は精神科へ通うこと。反省だけでは治りません。

ただし、漫才師がやるツッコミは「関係性」と「場の空気」という文脈で判断されるため、それが出来る夫婦は仲良しである。一方的な暴力による支配関係がDVなのであり、放置しているのは良くないことだ。

07619_2 講義が終わってから、学生らがメモを見せてくれた。板書だけでなく、奥田流の説明をマンガにしてるよ(笑)。すごい。本人に了承を得たので、画像アップ。ホームドラマの日米文化差の話が混じっていて微妙にニュアンスが違うけれども、そういう講義の受け方もあるんやと感心。画像をクリックすると拡大されます。

他にも、自分が「子煩悩パパ」のモノマネをしたら、それもマンガにしてたけど、ここでは割愛。どうも自分のモノマネは「あるある」ってな共感を呼ぶようで、リアル過ぎるみたい(苦笑)。ま、それだけリアルで子どもや親と接しているからとも言う。

 

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Posted by 奥田健次 社会 |