行動科学を無視した「問題行動」の原因究明!?
いわゆる「キレる子」の「問題行動」の原因を科学的に解明すると言いながら、行動分析学の専門家を1人も専門委員に入れないなんて、文部科学省初等中等教育局は何をやってるんだ?
「キレる子」の原因探れ、食事・睡眠など追跡調査へ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060909it04.htm児童・生徒が授業中などに突然、「キレる」原因を解明しようと、文部科学省は2007年度から、「定点観測」調査に乗り出す。
食事、テレビ視聴などの生活習慣や家庭環境が「キレる」現象にどう影響しているかを探ることで、生活・学習指導に役立てるのが狙いだ。
同省は来年度予算の概算要求に約1億5000万円の関連経費を盛り込んでおり、今後、モデル校や調査テーマ設定などに着手したいとしている。
小中学校などの学校現場では、近年、普段はおとなしい児童・生徒が教師から注意を受けると、突然、「うるさい」と食ってかかったり、教師に暴力を振るったりする「キレる」行動の増加が問題になっている。
文科省によると、04年度に全国の公立小学校2万3160校で児童が起こした校内暴力は前年度比18・1%増の1890件に上り、過去最悪になった。喫煙など生活の乱れが表れる問題行動の場合、指導しやすいが、通常は問題がない児童・生徒が「キレる」時は、原因がわかりにくく、指導も難しい。
このため、文科省は05年に「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」を設置し、科学的な視点で問題行動の背景を探る手法を検討。「高度情報化社会が子供の脳に及ぼす影響についての研究」「児童・生徒の情動に関する客観的なデータ」が必要との結論を得た。
文科省は06年度、調査手法などの検討を重ね、07年度から研究テーマの絞り込みや対象地域選定を行うための準備研究に着手する。
幼稚園や小学校時代から特定の児童を対象として選び、保護者の同意を得た上で、数年間にわたり調査する方針だ。〈1〉朝食摂取状況や睡眠時間などの生活リズム〈2〉テレビ視聴やテレビゲームをする時間〈3〉家族構成——などを研究テーマとし、これらの要素と行動がどうかかわっているかを分析する予定だ。調査は、例えば五つの研究テーマで2000人ずつなどとする規模を想定している。
幼児を対象にした「生活・成育環境と発達との関係」を研究している小泉英明・日立製作所フェローは「問題行動がなぜ起こるか、推測で語られているが、実際はよく分かっていない。実態把握をするため、科学的な証拠を集めることが重要だ」と話している。
(2006年9月9日14時32分 読売新聞)
先に仮説ありきですか。しかもその仮説が、「食事」「睡眠」「テレビ」「家族構成」ですか。そんな議論をまじめにやってるから、やっぱり『文部文学省』だね。全然、科学的でない。昼の番組で、みのもんたが「奥さん、ココアが良いんですよ!」と言っているのと大差ない議論だわな(笑)。
あのさ、「脳科学」関係の専門家を入れたら、最新の科学と思い込んでいるでしょ? それ、明らかに勘違いだよ。脳科学は、行動の説明には役立つかもしれんが、問題行動の解決には全然役に立たないって。
やってることが居酒屋的なんだよ。居酒屋のオジサンでも、「最近の子どもがキレるのはよぉ、脳に栄養が足りてないからじゃねえかぁ?」「おう、ちゃんと寝させてさぁ、睡眠をしっかり取ってりゃ良くなるよ」「あとさぁ、テレビの見せすぎなんだよな」「ああ、核家族化も良くねえんじゃね?」「あ、お兄さん、梅酒ロック1つ!」って喋ってるよ。
居酒屋のオジサンが、なかなか『ナノテクノロジー』のことについて世間話はできんでしょう? だから教育分野は駄目なの。いつまでも馬鹿にされ続けるの。
メンバーの先生方も、結構それぞれの分野で確かに著名な方々ばかりだけども。しかし、現場で実際に子どもの問題行動に接して来た人はいないんじゃない?
情動の科学的解明と教育等への応用に関する調査研究 委員一覧
【座長】有馬 朗人 財団法人日本科学技術振興財団会長
【委員】
安彦 忠彦 早稲田大学教育学部教育学科教授
石井 加代子 科学技術政策研究所主任研究官
伊藤 良子 京都大学大学院教育学研究科教授
内田 伸子 お茶の水女子大学副学長
江澤 郁子 戸板女子短期大学学長
大熊 健司 理化学研究所理事
岡田 尊司 京都医療少年院
小野 武年 富山大学特任教授
尾山 眞之助 国立教育政策研究所次長
河合 優年 武庫川女子大学教育研究所教授
門脇 厚司 筑波学院大学学長
小泉 英明 科学技術振興機構社会技術研究開発センター領域統括
小枝 達也 鳥取大学地域学部教授
斎藤 美代子 文京区立第一幼稚園園長
白瀧 貞昭 武庫川女子大学文学部教授
高橋 秀美 大田区立田園調布中学校校長
津本 忠治 理化学研究所ユニットリーダー
十一 元三 京都大学医学部保健学科教授
丹治 順 玉川大学学術研究所脳科学研究施設教授
三留 利夫 大田区立山王小学校校長
森 則夫 浜松医科大学医学部教授
森田 洋司 大阪樟蔭女子大学学長
山縣 然太朗 山梨大学大学院教授
(敬称略。50音順。)
だれか、この中で(または文科省の役人の中で)一人でも、行動分析学を専門とする人間を委員に加えようと考えた人は居なかったのかね。だとすれば、不勉強といわざるを得んわな。だって、問題行動でしょ? 当然、行動科学でしょう。
不勉強でないと言うならば、偏向しているだけ。要するに、行動科学に対する偏見だろうね。日本に昔から蔓延っているやつね。いや、それもやっぱり不勉強による偏見だわな。
行動分析の専門家もね、反省せないかんでしょう。こういうところに、1人すら行動分析家を入れることすら出来ないんだから。いつも自分、学会で吠えているんやけどもね、力のある立場の先生方がね、もっとロビー活動しないといけないって。
脳科学なんてね、新しい感じがするだけで、節約的に説明するためのものに過ぎんのよ。仮説演繹法による科学やね。でも、行動分析学は帰納法による科学。行動の原因を実験的に突き止め、行動の予測だけでなく制御を目的とした自然科学だ。実用的だから、偏見持たずに以下の本などを読んでみて。
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