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2006.07.22

『障害者プロレス』、行ってきました。

今日、仕事関係の取材も兼ねて、初めて『障害者プロレス』を観戦してきた。“DOG LEGS”という団体。今年で15周年だという。

非障害者プロレス(←こんな言い方で良いのか?)ならば、仕事の帰りにちょくちょく行くのだが。

今回の障害者プロレス観戦は、職場の同僚・嶋守さやか先生のセッティングによって実現した。出版社の社長と3人で見に行くことになったのだ。

障害者によるプロレスってどんなんやろう。想像すると、こんな感じか?

【試合前のミーティング】
A選手「ここで、ぼくがラリアットに行くときに、ぼくの義足を蹴り飛ばして下さい」
B選手「ふん、ふん、それで?」
A選手「ぼくの義足をリングの外に投げた後、マウントポジションを取ってボコボコにして下さい」
B選手「ふん、ふん」
A選手「ここで、うちのマネージャーがリングサイドに駆け上がります」
B選手「うん、そしたらぼくはマネージャーに向かって行くんだよね」
A選手「そうです」
B選手「ぼくがマネージャーに文句を言っている隙に、後ろから丸め込んでね」
A選手「そんな感じのフィニッシュでいきましょう」
B選手「了解っす」

脚色すればこんな感じの『アングル(試合の筋書き)』に支えられているんだろうと思っていた。

だが、正直言ってもうびっくりした。

ガチンコなのである。ほんとにボコボコに殴り合う、蹴り合う。彼らの繰り出すパンチやキックが、肢体不自由による不随意運動も手伝って、しばしば危険な角度で相手の急所を襲う。

「おいおい、やばいよ、そんなに殴っちゃ」「がんばれ、蹴り返せ」ってな感じで、自然に盛り上がっていくのだ。さらに、軽妙でちょっとブラックな実況アナウンスと解説が、その場を盛り上げる。

印象的だった試合を振り返る。

第3試合の『サンボ慎太郎vs永野V明』。このところスランプ状態に陥っているベテランのサンボ慎太郎が、若手バリバリの永野選手に立ち向かう。永野選手のハードパンチが容赦なく慎ちゃんをボコりまくる。体の大きな永野選手に押しまくられて、一般人体型の慎ちゃんは顔面腫らしてフラフラ状態。会場は自然発生的に慎太郎コール。ここに判官贔屓が生きていた! そして、1Rから殴られながらもグランド状態に引き込もうと我慢していた慎ちゃんが、とうとう絞め技で大逆転勝利。誰もが永野選手の勝利かと思っていただけに、会場の盛り上がりは凄まじかった。

第7試合の『鶴園誠vsウルフファング』。現王者・鶴園に一度も勝利したことのないウルフが、試合前、突然に「この試合で引退をかける」と宣言。試合は鶴園の一方的な展開。2Rはもう続行不可能かと思われたが、本人の意思で試合続行。だが、ウルフの粘りはこれ以上続かず惨敗してしまった。試合後、「体力、気力ももう限界です」と言って涙をぬぐったウルフ(後から思えば、何気に『ウルフ』と呼ばれた千代の富士の引退表明会見と似ているが)。次の来年1月興行を引退試合にするそうだ。初めて見た選手なのに、涙さそうシーンだった。

そして、第8試合メインイベントは『愛人vsプチ愛人』。これは、障害者の父親とその息子(健常者)との親子対決だ。息子は小学1年生。両手両足を使えないように、布で縛って父親と対決する異者格闘技戦、3分3R。親子で話し合って、1Rと2Rは息子の両手は後ろ手で縛られる。3Rのみ、両手は前で縛られる。1Rと2Rは、お互い蹴り合い(踵落とし)の応酬だった。父親の片足攻撃が、適格に息子の顔面や後頭部を捉えている。息子はもう痛みを堪えるのに必至だった。セコンドの母親は「泣くな、動け! 回り込んで顔を蹴れ!」と檄を飛ばす。なんとか、2Rを耐え抜いた息子は、3Rは拘束された腕を前にしてもらえる。すると、やはり動きが全然違うのだ。動き回って、父親に強烈な蹴りを返していく。このまま父親はKOされるのではないかというほどの反撃だった。時間切れ、判定。結果は、2−1の僅差で父親の勝利だった。前回の親子対決では、息子は拘束なしで父親と戦って勝利したそうだが、手足を縛っての勝負で負けてしまった。痛かったのか、悔しかったのか、息子は泣きじゃくっていた。

母親が「今日はよく頑張ったよ!」と両者を称えて抱擁。最後に父親が「おい、帰るぞ!」と叫ぶ。障害者の父親が、父親としての圧倒的な威厳を見せつけた。妻に抱きかかえられながら退場した父親の姿が大きく見えた。

ドキドキあり、ハラハラあり、笑いあり、涙ありのすばらしい興行だった。

北沢タウンホールは満員だった。自分は、実は『週刊ゴング』を購読して10年になる。自分の記憶では、今まで『ドッグレッグス』が取材されたことは皆無だ。最近のプロレス専門誌は、かなりマイナーな団体でも積極的に取り上げるようになったのに、なぜ障害者プロレスを取り上げないのだろう。

プロレスの週刊誌がそんなだから、今日の『ドッグレッグス』を観戦するまでは、客層もボランティアやってますって人ばかりだと思っていた。ところが、非障害者プロレスの客層と同じように、若いニーチャン、ネーチャンも多く、格闘技ファンっぽい中年もいれば、外国人もいた。

自分はここ数年、健常者と過ごす時間よりも発達障害児と一緒にいる時間のほうが多くなっている気がする。後は一人っきり。そんな自分ですら、まだまだ障害者のことをよく知らないんだなと思った。

彼らは、決して「やらされている」わけではない。「やりたい、魅せたい」という表現者たちだ。無敵の表現者による、最高の興行だった。

少しでも多くの人に、それぞれの目で確かめてもらいたいと思う。

自分も、北島代表の著書を読んでみよう。

 

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Posted by 奥田健次 スポーツ |