« ABA2006参加記(5) | トップページ | ABA2006参加記(7) »

2006.06.01

ABA2006参加記(6)

今回のシンポジウムは、アメリカのHeadsprout社が中心メンバーのものだった。

自分はもう何度か彼らのシンポジウムに参加しているのだが、今回が初めての大学院生もいたので、一緒に参加してきた。

シンポジウムの内容についてあまりここで書いても一般読者には興味のないことかもしれないので、Headsproutの仕事について紹介することにしよう。

現在、アメリカの教育的危機の一つに、アメリカの子どもの約40%が読み書きの問題を持っていることが挙げられている。これは、National Center for Learning Disabilitiesによって2001年に報告されたことである。

これだけの問題があるのは、英語がアルファベット26文字の組み合わせによって発音が異なるという言語の構造上の特徴に起因するのであろうが、他にも経済的な格差とそれが生み出す教育格差などの社会構造も関係しているのかもしれない。

問題の原因はともかく。Headsproutはこうした喫緊の社会的課題に応えるために行動分析学者数名が起業したベンチャー企業である。つまり、Headsproutは、アメリカの子どもに効果的に「読み」のパフォーマンスを高めることにコミットした会社というわけだ。ここでの「読み」とは、テキストを読む“reading”と、文脈や内容を理解する“comprehension”の両方が含まれている。

Headsproutの「読み」指導プログラム(Early Reading)は、サイエンスベースドでありリサーチベースドである。つまり、実験的に立証された効果的な指導方法がこのプログラムの随所に盛り込まれており、よくある作りっぱなしの教材開発会社とは発想も方法も違っている。

また、子どもはオンラインで学習を進めていくのだが、子どもがあるエピソード(課題)で正解したり間違ったり、答えるのに時間がかかったりしたことは、すべて個別データとなって収集されていく。あるエピソードでは、学習がスムーズな子どもとそうでない子どもとのスコアの幅が大きすぎるといった場合、そのエピソードはバージョンアップされ、こうした幅が少なくなるまで改訂されていく。

詳細な個別データを見せてもらったことがある。確かに、10万人の学習者がいれば10万人のデータ、1万の教室のデータがあれば1万の教室のデータという感じで、学習者の達成過程がよく分かる。

教材に子どもを合わせるのではなく、子どもに教材を合わせていくというスタンス。良き臨床家のスタイルを、企業で実践しているというわけだ

必然的に大きな成果を上げており、教育局や第三者機関などから表彰されたりしている。

今回のシンポジウムは、自分は教材開発に関心のある大学院生を連れていた関係で参加したのだが、自分にとって真新しい話はあまりなかった。院生にとっては刺激的な内容であったと思う。

思わず笑っちゃったのは、このEarly Readingを導入している小学校の登校シーン。スクールバスの中身を改造していて、みんながブースの中のパソコンに向かってEarly Readingをやっていた。やらされているというのではなく、教材自体が楽しいので進んでやっている感じだ。バスの中でゲームボーイで遊んでいる感覚なのだろう。

自分の『関西んぐりっしゅ』も、Early Readingでスキルアップしてもらおうかと本気で考えたりして(笑)。

Vice President の Janet Twyman とは、今回は挨拶程度しか話はできなかったが、こちらの仕事もまた見せられるように精進しなければならない(遅々とした歩みだが)。

 

にほんブログ村 政治ブログへ ←ポチっと一押しに感謝。

関連記事:
ABA2006参加記(5)
ABA2006参加記(4)
ABA2006参加記(3)
ABA2006参加記(2)
ABA2006参加記(1)

Posted by 奥田健次 学ぶこと, 特別支援教育 |