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2006.05.06

iPodで「どこでも授業」!?

eラーニングは時流ではあるけども。ちょっと違うだろう。

iPodで「どこでも授業」、NECが新システム
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060505ib02.htm(YOMIURI ONLINE)

 NECは、アップルコンピュータのデジタル携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」に学生が授業の動画などを保存し、時間と場所を選ばずに「受講」できる教育用システムを5月末に発売する。
 講義の動画などを学生がダウンロードすれば学校側に通知され、「出欠」状況も管理できる仕組みだ。大学や専門学校、塾、予備校、小中学校などに売り込む。
 システムは、学校側が授業の動画やリポートの課題などをサーバーに登録する。
 学生は情報をパソコンにダウンロードしてiPodに転送し、通学途中や自宅などで動画を見ることができる。ダウンロードする際にIDとパスワードの入力を求めるため、学生の「出席」状況を学校側が確認できるのが特徴だ。
 システムは470万円(税抜き)で、3年間で計100本の販売を目指すという。
 パソコンやネットを利用した学習方式(eラーニング)は国内外の大学などで広がっており、NECは若者に人気が高いiPodなどを取り入れた教育用システムの販売を強化し、学校現場での普及を目指す。
(2006年5月5日11時42分  読売新聞)

eラーニングがフィットする学習というものがある。それは、学習者に自発的な反応を求め、その正誤を即時にフィードバックし、一定の達成基準に到達するまでこれを繰り返していくスタイルである。つまり、何かを暗記したり、文字の読みを修正したり、第二言語の習得であったり、そういった課題で効果を発揮するものではないか。

今回想定されている「授業の動画」を学習者が見るだけで、本当に「学習」を促進するのだろうか、甚だ疑問である。ここでいう「学習」とは、机に向かって勉強するという意味ではなく、心理学でいうところの「学習」である。

先生の講義を「聞いているだけ」で、学習が保証されるものではないだろう。それを、授業の動画をダウンロードしただけで「出席が確認できる」という発想も単純すぎる。さすが『不登校大国・日本』だ。

自分の好みとしても、一般の講義をビデオで見せることには抵抗感がある。ブラウン管を通しては、その場の空気が読み取れないことが多いからだ。

どちらかというと、自分はいろいろな人に自分の講義を公開したいと考えているほうだ。生の講義では、クラス内の雰囲気などを察知しながら、説明を追加したり例え話を出したりできる。またその都度、必要なときに質問を求めることもできる。その他、学生の集中や疲労の度合いを見て、ほどよく雑談を入れることもできる。などなど、他にもライブならではの配慮が可能だ。

つまり実は、生の授業とは一方通行のものではなく、学生と教師との相互作用なのである

学生にも講義のちょっとした緊張感を味わってもらいたい。残念ながら、最近の学生は平気で授業中にトイレに消えていく輩も増えているようだが。嘘でもいいから、もう少し申し訳なさそうに退室すればいいのに。自分は、自分の講義の動画を、ウンコしながら聞いて欲しいとはあまり思わない(トイレで本を読む人が意外に多いようなので、トイレ内学習には一定の効果があるかもしれないが;笑)。

ちょっと講義に飽きたからといって、動画を一時停止してサザンオールスターズを聞いてリフレッシュするのもどうかと思う。最初は真面目に講義を受けていても、携帯メールが着信すれば携帯を見てしまうかもしれない。電話が鳴れば出てしまうかもしれない。それでも「出席」? それから「遅刻」という概念も無くなってしまうではないか。「早退」も自由だし。

こんなサイバーな学習を受けて育つ学生って、どんな将来像なのだろう。

そもそも、何かを学びたいなら山野を巡って師の庵を訪ねるのが学習者の姿勢であって、「どこでも授業」なんぞ「いつでも挫折」である

いずれにしても、eラーニングではどんな学習が効果的で、どんな学習には不向きなのか、実験的に明らかにしていく必要があるだろう。

 

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Posted by 奥田健次 教育 |