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2006.03.22

WBCを総括する

昨日は日本野球のレベルの高さを世界に知らしめた気持ちの良い一日だった。

だが、このWBC(ワールドベースボールクラシック)という大会については疑問だらけなので苦言を呈しておきたい。

まず、収益の分配について。これはアメリカ側に偏りすぎていると指摘されている。収益の35%が主催者のメジャーリーグ(機構と選手会)に分配される。それに対して、日本プロ野球機構には7%、韓国には5%となっているそうだ(詳細は不明)。これに対し、FIFAワールドカップ(サッカーW杯)の収益分配率はもっと公平なもので、FIFAに入った収益も世界各国でのサッカー普及に使用されているという。WBCでは収益の使途は不透明なところが多い。

次に、組み合わせについて。アメリカはどうしても初代世界一になりたかったのだろう。アメリカ代表は、ドミニカやプエルトリコなどメジャーリーガーが多数いるカリブ・中南米諸国とは、決勝まで対決しない組み合わせになっている。その編成(『偏成』と言おうか)のせいで、日本は韓国と3度も対戦することになった。常識的に考えても、予選リーグAの1、2位を、予選リーグBの2位、1位とクロスさせるべきだろう。これも、サッカーW杯では考えられないことだ。

そして、審判の問題である。ボブ・デービッドソンという審判を見ていると、野球はスポーツというよりプロレス的なものという印象を受けた。オリンピック競技から外されるのも仕方のないことかと思ってしまった。だが、根本的な問題はこうだ。サッカーの国際大会では、かならず第三国の審判が試合を裁くようになっている。また、誤審をした場合、審判の出場停止はもちろん資格等へのペナルティーもあるという(WBCの審判のほとんどがアメリカ人であり、誤審を続けたデービッドソンがその後も審判を続けた)。サッカーの国際大会の場合、ベスト8以降の試合では、ベスト8の国以外の第三国の審判だけで行われるそうで、かなり厳正である。

それから、準決勝の進出を決定する試合に時間差があったこと。WBCでいえば、『日本−韓国』の試合が行われた後、『アメリカ−メキシコ』が行われた。W杯の場合、こういう場合は同時刻キックオフなのだそうだ。今回のWBCの場合は時間にずれがあり、片方の試合結果によって、次の試合での選手のプレッシャーや敗退が決まったチームの消化試合的な意味合いでのモチベーション低下などの影響が考えられる。今回、メキシコが最初から本気で戦ってくれたし、デービッドソンの誤審も逆にチームの士気を高めることになった。

さらに、代表選手の招集についての問題である。今回、ヤンキース(メジャーリーグ)側に何らかの意向があったようで、松井選手を日本代表に招集することができなかった。

他にも、開催時期の問題、ルールの問題など数々の課題を残してきた。こういう不備が続くようならば、国際大会として認知されることは先の先だろう。つまり、このWBCはアメリカのアメリカによるアメリカのための大会だった。

だが、アメリカが世界一になるべくセットされた大会で、そのアメリカが2次リーグ敗退となり、アメリカが決勝まで対戦を避けた優勝候補ひしめく中南米勢の代表キューバを破って優勝した日本代表は、本当にすばらしかったのだ。

野球(ベースボール)を普及させる意図がメジャーリーグ側にあるのならば、野球後進国(特にEU諸国)にそれなりのキャンペーンをしていく必要があるだろう。自分のところの金儲けだけでは、EU諸国は見向きもしない。そういう意味では、日本のほうが野球をアジア各国に広めるのに貢献している。

繰り返すが、日本が世界一になったことの意味は大きい。現場はスポーツであっても、裏では政治的な駆け引きがあるのだ。

3年後の第2回WBC大会。日本が出場すればディフェンディングチャンピオンとしての出場となる。だが、日本はWBCの出場を大いにしぶればよい。そして、できる限りWBCの運営上の問題点を改善するよう要求すればよいのだ。こうした交渉の意味合いは大きい。

 

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Posted by 奥田健次 スポーツ経済・政治・国際 |