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2006.01.07

役に立つのか、教職大学院!?

不登校問題に重点を置く教職大学院ができるそうだ。

熊本大学が来春(2007年4月)、不登校問題に対応できる教員を養成する「教職大学院」開校のための準備をしているそうだ。

以下、引用。

「教職大学院」 熊本大、不登校対応で来春開校へ準備
http://kumanichi.com/news/local/index.cfm?id=20060105200005&cid=main
2006年1月5日 (熊本日日新聞:くまにちコム)

 熊本大(崎元達郎学長)が不登校の子どもたちに対応できる教員を主に養成する「教職大学院」を、二〇〇七(平成十九)年四月に開校する方向で準備を進めていることが四日分かった。同大によると、社会問題化している不登校をテーマにした教職大学院の設立は「全国的にもまれ」で、今後の展開が注目される。
 教職大学院は教員の資質向上などを目的に、中央教育審議会が〇七年四月に開校できるよう検討しており、全国の大学で準備が進められている。学生のほか現職教員も対象に、より高度な専門的職業能力を養成する教育を行う。修了者には専門職学位の「教職修士」が与えられる。
 熊大教育学部によると、教職大学院の定員は三十人程度とし、そのうち半数超は現職教員枠に充てる。指導する教員は十一~十三人で、うち四割程度は校長経験者など実務経験者を起用したい考え。修業期間は原則二年だが、現職教員は一年とする予定だ。
 教育内容は、不登校や学級崩壊など学校現場での課題への対処能力を養成するため、生徒指導や生活指導、学級運営についてのカリキュラムに重点を置く。特に不登校への対応能力養成カリキュラムは、文部科学省の〇五年度「大学・大学院における教員養成推進プログラム」に選ばれた同大の「不登校の改善・解決に資する教育力の養成プロジェクト」を基にする方針。
 同プロジェクトは、同大教育学部が〇二年度から熊本市教委と連携して実施している「ユア・フレンド事業」がベース。同事業では、学生ボランティアが不登校児童・生徒の家庭を訪問するなどして成果を挙げている。教職大学院のカリキュラムでは、同事業のノウハウに臨床心理学などの医学的アプローチを加えた上で、小中学校や不登校支援施設、保護者などと連携しながら、理論と実践の両面を系統立てて学んでいく。
 石原昌一・同大教育学部長は「地域の学校のリーダーとして、不登校など現代的な教育課題を解決できる教員を養成したい。県教委や市町村教委、学校現場の協力が不可欠となるので、これから具体的な協議を進めていく」と話している。(野田一春)

以上、引用おわり。

教職大学院の定員が30人程度で、うち半分は現職教員の内地留学。内地留学とは、現職教員(公務員)が給料をもらいながら大学院に通うシステムのこと。ちなみに、これは夜間ではない。内地留学の教員は、その期間、勤務校への出勤は無いのだ。つまり、一般学生とまったく同じ条件で院生生活ができ、なおかつ給料がもらえるのだ(しつこいけど)。内地留学に対する批判と財政面の問題から「修業期間を1年」と言っているのだろう。1年で修士号を出すのだろうか?

話を戻そう。この教職大学院の指導教員は10〜13名程度という。このうち、4割程度は校長などの実務経験者を起用したいという。

本当にこんな陣容で大丈夫なのだろうか。管理職としての実務経験が不登校を治せるのか? 教育委員会と関係の良かった校長の天下り先を確保するだけの話になりはしないか。

大切なことは、いかに目の前の問題を解決するか、その解決方法の有効性を科学的に検証し、うまくいかない場合は自己批判的に修正を加えていく問題解決型の思考プロセスだ。こうしたことを校長経験者なら出来るというのか? 「わしの経験では...」ということにならなければ良いのだが。

上記の記事は1面だが、24面の解説記事によると、熊本大学と熊本市教委でやっていたという「ユア・フレンド」事業なるもので、ここで不登校児の86名中18名が学校復帰した「大きな成果」を挙げたのだそうだ。我が目を疑ったが、確かに新聞には「大きな成果を挙げている」とある。

学校復帰が20%程度で大きな成果とは。8割も治せていないのに。新聞社ももう少し頭を冷やして、しっかり勉強してほしい。こんな小さな成果、いや失敗をもとに教員養成をやられるのは不安だらけだ。もちろん、多くの臨床心理士指定校の体たらくぶりを見ていると、役に立たぬ臨床心理士を大量生産するより、現職教員の力量を高めるほうが生産的だとは思うのだが。

アイディアは評価するに値するのだが、実績の無さと校長経験者を教授に4割も採用しようという手法に、実務者と呼ばれる現場を知らぬ人々お得意の無策ぶりが現れている。校長経験者なんぞ、1割未満で十分だ。

自分の知っている元・校長は「大学なんぞに呼ばれても行かない」と豪語し、天下りも拒否して、定年後に私塾を作って不登校の子どもらをバンバン治している。このように地域で実績を上げている校長経験者(または地元の子どもらの相談相手)にこそ、三顧の礼を尽くして任官を依頼するべきだ。だがこんな校長は本当に1割未満なのだ。

不登校を治してしまう校長は、往々にして教育委員会に怒鳴り込みに行くようなことをしている(子どものために、せざるを得ない)。教育委員会に対して「イエスマン」な校長ばかりが、天下りの甘い汁をすすっているのだ。

「イエスマン」に不登校を治せるか!!

 

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     など。

Posted by 奥田健次 教育 |