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2005.10.03

殴る小学生と殴られる大人

小学生の校内暴力が急増していると世間で騒がれている。子どもにではなく教師に対して(つまり大人に対して)である。

こういう現象が注目されているが、そんなもの数年前から前兆があったことだし、なるべくしてなった結末といえる。

10数年ほど前だったか中学生がナイフで教師を刺殺するという事件が世間を騒がせ、それから子どもが大人を殺す事件がしばしば起こるようになった。当時、こうした中学生をどうしたらよいのか、また彼(彼女)らが中学生になるまで、すなわち小学生や学齢前の時期にどのような子育てや教育をしていくべきなのか、具体的な議論や提案はなかった。

むしろ議論は、社会状況に原因帰属するような評論が中心であり、子どものストレスが高まった結実として殺人に至るという、知識人(医師や大学教員など)による根拠のない仮説が跋扈していたように思う。つまり、殺人を行った子どもは加害者でなく被害者であるといわんばかりの論調であった。

結果的に、ゆとり教育だの子どもの人権だの、親も教師も自分の指導力の無さを隠蔽し、子どもに対して腫れ物に触るようなかかわりしかできなかった。

この10年の間、いやこの現在でも、学齢前の子どもが母親を殴り、母親も我が子の暴力を受け入れている関係を、何度目にしたことか。小学生に殴り蹴りつけられて も無抵抗で耐える教師に何度、出会ってきたことか。自分の仕事柄、こういう場面に出くわさない週はないほど、大人が子どもに殴られている

たとえば、ナイフを学校に持ってくる中学生。当時こんな事件が増えてきたので、一斉に抜き打ちで持ち物検査をしてはどうかという意見があった。だが、あえなく子どもの人権を保障せよという批判があって、持ち物検査をすることもできなかった。

自分は当時、こう反論したものだ。
「子どもが自由に武器を持ち歩けるなら、教師はピストルを持つべきだ」
もちろん過激な提案であることは分かっていた。過激ではあるが、実際にナイフを忍ばせ持ち歩く子どもが学校の中にいて、その周りに丸腰のクラスメイトや教師がいる。いつ、だれが突然、殺されるかも知れない。丸腰の人間の人権は? 生命の安全はどのように保障されるのか?

教師にピストルなんて持たせたくない。そう反発する人がたくさんいた。その度に自分は、
「教師にピストルを持たせたくないのは自分もそう思う。だが、それ以上に子どもに凶器を持たせたくない(持たせない)と思うのが大人の仕事ではないのか」
 と言ってきた。

さて、10年経過した今。現場はどうするのか? 知識人の空虚な仮説にまた振り回されるのか? 懲りもせず、ストレスが原因などと馬鹿なことを言い続けるのか?

自分には、これを解決するための具体的方法がいくつもある。だが、ここでは触れないでおこう。

--以下、参考記事の引用。

小学生の校内暴力、2年連続増 「対教師」急増 文科省
2005年09月22日19時18分  アサヒ・コム
http://www.asahi.com/life/update/0922/006.html

 全国の公立小学生が04年度に学校内で起こした暴力行為は1890件で前年度比で18%増になっていることがわかった。03年度調査でも27%増で、2 年連続大幅増となった。文部科学省が22日、公表した。このうち、子ども同士や器物損壊の校内暴力は10%台の増加だったのに対し、教師に対する暴力は 336件の過去最多で、前年度の253件から33%増となった。中高生の校内暴力は減少し沈静化の傾向が見えるのに、小学生の校内暴力には歯止めがかかっ ていない。
 この調査は、文科省が毎年すべての公立小中高校を対象に、各教育委員会を通じて実施しているもので、今回は04年度に起きた子どもの暴力行為やいじめなどの発生件数をまとめた。
 文科省によると、小中高生全体の校内暴力の発生件数は、対前年度比4%減の3万0022件。内訳は、小学生の1890件(18%増)のほか、中学生が2万3110件(6%減)、高校生が5022件(4%減)となっている。
 中高生に比べて突出して増加している小学生の校内暴力を細かく見ると、子ども同士の暴力が最も多く992件(前年度比16%増)、次いで器物損壊が 544件(同14%増)、対教師暴力が336件と続く。対教師と子ども同士を除いた「対人暴力」は18件(13%増)だった。
 このうち、最も伸び率の高い「対教師暴力」は、(1)教師の胸ぐらをつかむ(2)いすを投げつける(3)故意にけがを負わせるなど、一定水準以上の暴力 行為について学校から報告が上がったものをまとめたものだ。また、校内暴力で警察に補導された小学生の数は04年度が24人。02年度の2人、03年度の 11人から急ピッチで伸びていた。
 校内だけでなく、学校外での暴力行為も中、高が減少したのに小学生は19%増の210件だった。
 一方、都道府県別では、校内外合わせて小学生の暴力行為が増加しているのは26都府県あった。
 小学生の対教師暴力の件数増加について文科省は「小学校では学級担任が子どもの問題を一人で抱え込み、学校全体や関係機関と一緒に取り組めない。結果的に問題が放置され、同じ児童が暴力を繰り返すケースもあるのではないか」と分析している。
 一方、同時に調査したいじめについては、公立の小中高校と盲・ろう・養護学校全体で2万1671件で、03年度に比べて7%減った。高校と盲・ろう・養護学校ではやや増加したが、小学校は5551件、中学校は1万3915件でいずれも前年度比8%減だった。
 今回、初めて国公私立高校の不登校者数を調べたところ、全体の1.8%にあたる6万7500人だった。小中学生は全体の1.1%にあたる12万3317人いた。
 一方、公・私立高校の中退者数は7万7897人で、82年度の統計開始以来最少だった前年度をさらに3902人下回った。

Posted by 奥田健次 教育社会 |