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2005.09.29

自衛隊の危機状態

今年の春頃のニュースだが、防衛大学校を卒業したが民間企業への就職などによる任官拒否は22人。自衛隊に進んだ任官者は303人で過去最小だった。また、中退者も前年の過去最多113人を上回り、最多記録を更新している(132人)。

さて、自分が尊敬する人物の一人で、ある自衛隊幹部から聞いた話だ。

その話によると、イラク派遣から帰国した自衛隊員の自殺者が増加しているそうだ。

上層部は幹部たちに「問題は何なのだ? 早くなんとかしろ」などとまくしたてているという。

自分に言わせれば「何を言っているんだ、今頃」である。

米兵も同じように、イラク戦争帰還後の自殺率が高まっている。アルコール依存、薬物依存者の急増も深刻な問題だ。これは、ベトナム戦争後の帰還兵と同じ状況である。

自衛 隊についても、ここ最近、大麻取締法違反の容疑で逮捕者が続出している。ストレスの高い仕事であるのは確かだろう。ストレスへの対処法(コーピング)につ いては、また別の機会に別の問題として書くことにする。

イラク派遣後の自衛隊員の自殺者増加の問題に戻ろう。単純にストレスが高いと説明するのは誰でもできる。

しかし、自分はそれ以外の問題として、自衛隊員のアイデンティティーやエフィカシーを、われわれ国民は直視せずにきたことを指摘しておく。難しい横文字を使ってしまったが、要するに、

俺たち何のためにここにいるのだろう?

という空虚さを感じさせる状況になってしまっているのだ。

もしかして俺たちは政治の道具にされているんじゃないだろうか?

こういう気持ちにさせてしまっているならば、自分は申し訳ない心の疼きを感じて仕方がない。

まだ、米兵の場合は自国の本土(ハワイを除く)が初めて攻撃を受けたという事実があり、初期的にはアメリカ国民の後押しもあったから、士気も高く堂々と戦地に赴いたことであろう。

だが、自衛隊員には「飼い主ブッシュのスローガンに追随したポチ小泉の命令」でしかない。日本国民の後押しもない。日本国民は「アメリカに付き合っておいたほうがいいから」という程度の1億総ポチ・アメリカ依存症の、ぬるまゆい風を漂わせているだけである。

これでは自殺者が増えても仕方ない。まったく日本国民は冷たいぜ。

もし、日本国内に1発でも隣国から出来の悪い核ミサイルが落とされて有事となったとしよう。あるいは、在外邦人が次々に捕らえられ殺りくされ戦争状態になったとしよう。

国民が目覚めて「やれ、自衛戦争だ!!」「同胞を取り戻せ!!」となった場合はどうか。こういう条件が整えば、自衛隊員は、

俺たちの(俺たちにしかできない)仕事だ。

となるだろう。まあ、ずっと眠っていた国民が突然に目を覚ますというのも恐ろしい話だが。そのヒステリックな姿は、悲しくも滑稽である。

大義のない仕事を押しつけていることが、自衛隊のさまざまな危機状態となって現れているのだ。

それにしても、相変わらずマスメディアはこうした問題をほとんど報道しない。規制されているのだろうが、議論さえしないのか?

Posted by 奥田健次 経済・政治・国際社会 |