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2005.09.30

転んでもタダで起きない

自分のクライアントである保護者の話。

息子が医師に自閉症と診断されてから悩める母の一人となって数年後、口コミで自分のことを聞いて相談に来るという、よくあるパターンでの出会いであった。(専門でない読者への注釈:自閉症は親のせいで患う病気ではなく、先天的な脳の器質的障害に起因する発達障害である)

ただ、海外にお住まいの方なので、数か月に1回しか直接セラピーができない。こういう支援スタイルなので、そのご家庭でもできる程度のホームワークを提供している。それでも、この男の子(5歳)は順調に伸びてきている。

子どもが変わると保護者も変わる。保護者も子どもの変化を実感できるようになり、どんどん強くなっていくのである。

前回のセラピー中に出た話だが、子どもに何か習い事をさせてみたいとのこと。セラピーばかり増やすよりも、運動系や芸術系の習い事をすることは理想的なことだ。

なぜなら、セラピーがうまくいっていない場合、習い事をしてみようという余裕もないだろうから、こういう傾向はセラピーが順調であることの証左でもある。また、子どもの将来のことを考えても、余暇活動を身に付けていくことは大変重要なことである。

さて、その習い事。「何を始めるんですか?」と聞いたところ、母親は「バレーです」と言う。「こんな小さな男の子がバレー?」という顔をしていると「バレエ」だそうだ。クラシックバレエを始めようとしたそうである。

クラシックバレエを自閉症の子どもに習わせようという保護者に出会ったのも初めてかもしれないが「なかなか、面白そうですね」とコメントした。

ところが、母親が言うには「バレエ教室にお願いに行ったんですが、断られました」という。もちろん、母親は息子が自閉症であることを正直に伝えた上でのことである。

ここまでの話ならば、しばしば出会う残念な話である。保護者によっては、「差別だ!!」と憤ってみたり、失望してやる気をなくしたりする人もいるかもしれない。

ところが、この母親はさすがという動きをしてくれた。転んでもタダでは起きない奥田式というか、その極意を見事に実践してくれたのだ。

「で、どうしたんですか?」と尋ねると、

「バレエ教室はやめてヒップホップ教室に行きます」

とのこと。

あまりに見事な切り替えっぷりに、さすがの自分も一瞬目が点。

でも、これは本当にすばらしいアイデアだ。とりあえず形から入ることもできる。ヒップホップらしい服装や身なりをさせてみよう。こんな風に考えるとワクワクしてくる。

バレエのことなんざ気にするななのだ。
奥田先生が白鳥のレオタードを着てやるよって(笑)。

音痴でも構わない。姿勢が悪くても文句を言われそうにない。気になる独り言も、歌詞にしてしまえば良いのだ。棒読み大歓迎。

ちょっと即興で作ってみた。

おれはYO おれはYO おれは電車が好きなんだYO
これはYO これはYO これはクハ135の4
ぶらりGO ぶらりGO ぶらり途中下車の旅でGO


みたいにね。

独り言をやめさせたがる保護者は山ほどいる。
やめさせる発想から活かす発想へ。こういう素晴らしいアイデアに出会うたびに、この仕事の面白さが身に染みる。

Posted by 奥田健次 特別支援教育 |