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2005.09.22

全体研修より事例研を(2)

前回の記事で、講演を聞くだけの全体研修会がさほど有意義では無いと述べた。

学校の教師の実践力を高めるためには、教師の自発的な行動をいかに引き出すかが肝要である。

自分は昨年からスタイルを変更した。講演活動はできるだけお断りし、事例研究会(以下、事例研)を開催することにした。ここに至るまでには、地域の学校で危機感の強い教員や管理職、現場のことを良く理解している教育委員会の主事など、さまざまな立場の人達の理解と協働がなければ実現不可能であった。

また、大学側の教員にもある程度の負担は必要であった。自分はノーギャラで事例研の助言者を引き受けた。

事例研では、教師がA4用紙2、3枚程度に対象児童生徒のことをレポートし、時間にして1ケース30分ほどのプレゼンテーションを行う。助言者は、児童生 徒についての細かな情報を確認していく。その後、参加者はグループでケースについて話し合いを行い、グループ毎にどんなディスカッションをしたか2、3分 程度で発表を行う。最後に、助言者が発表者に対して具体的な実践レベルでの助言を行う。

こうした形式は、従来の全体研修で聞くだけの受動的な学習形態ではなく、自発的に何かを作る本当の意味での学習を促進する。聞くだけでは何を学習したのか不明のままである。まさに、グラウンドに降りて実際にキャッチボールを練習するスタイルが必要なのだ。

百聞は一見にしかずということわざがあるが、ここでは、百見は一行動にしかずと言っておいて差し支えなかろう。

たとえば、教師が子どもの不登校の実態についてプレゼンした際、助言者から家庭での生活習慣について質問されたことで「そんなことも聞かれるのか」と発見 があったとしよう。その教師は、次の発表機会までには子どもの生活習慣について保護者から聞き取りを行ってくれるし、それ以外の事例についても聞き取りを してくれる。つまり、保護者に何を聞くべきかということがキャッチボールをしているうちに、身に付いていくのである。

こうした事例研を毎月開催し、これに毎回参加した教師は、たった1年で考えられないほどの実践力を身に付けていく。おまけに自信の無かった教師が自信を取り戻していく。どうせ投資するなら、自発的に発表する機会のある事例研に投資したほうが、大きな利益となって返ってくることは間違いない。

自分にも利益があった。講演活動中心だった頃、教員や保育士が個人的にわざわざ研究室まで相談に来たケースが4年間で5件だったのが、事例研にしたとたん4か月で12件 である。たった4か月で4年間の2倍以上(昨年のシンポジウムで、このデータの一部を紹介した)。幼稚園教諭、保育士、養護教諭などが、出張としてではなく自分の時間を割いて来られるのだ。無料で対応す る自分も忙しくなってしまったが、こうした現場の変化をとても心強く思った。

結論だが、自分は学校や教育委員会に対して、教師全体のスキルアップを求めないことにしている。事例研に1度だけ参加した教師には「私はもう分かったか ら、今度はあなたが行っておいで」とか「みなさん平等に行きましょう」などと言う人もいるが、それは意味がないので否定している。キーパーソンを養成して いかなければならないのだ。

学校や教育委員会も(もちろん文科省の方向性としても)、全体研修会の予算取りに力を入れるのではなく、事例研やワークショップなどの定期的な開催に力(予算)を入れてもらいたいものである。

Posted by 奥田健次 教育, 特別支援教育 |