郵政民営化について
郵政民営化法案が、衆院本会議では僅差で可決し、参院本会議では反対多数で否決された。両院の本会議前から採決直前まで、小泉首相と自民党執行部からの激しい反対派への切り崩し工作が行われていた。
参院本会議で否決されるまで、小泉首相と党執行部は公然と「衆議院の解散」「反対議員には次の選挙では公認を与えない」という脅しをかけていたが、これらの脅しは実際に実行されてしまったわけである。
参院本会議で否決されたその日、脅し通り小泉首相は衆議院を解散した。そして、反対票を投じた議員には公認を与えない意向を表明。そればかりでなく、反対議員の選 挙区に対立候補を立てる方針を固め、実行に移している。つまり、同じ選挙区で自民党議員同士を戦わせようというのである。
これらの過程で、小泉首相ならびに自民党執行部が、またも掲げるスローガンは「国民に問う」「改革を断行する」「官を縮小する」「古い自民党をぶちこわす」など一般大衆にウケる響きのするものばかりである。
マスコミによる世論調査では、このような強権政治手法を続ける小泉内閣及び自民党を支持するのが50%以上にのぼる。自分は、強権的な政治手法が悪だと考えているわけではない。貴重なリーダーシップが必要なときもあるからである。
ただ、改革というならば「改革の本丸」とか「古い体制を壊すべき」などというスローガンは要らない。具体的なレベルでの、将来の予測が欲しい。
郵政民営化に小泉首相がこだわるのは、さまざまな意見もあるが、アメリカからの政治的要請に応じるためのものである。郵政民営化は、アメリカの政治・経済界に利する道であり、小泉・竹中ラインがそこを邁進しているのである。
--以下、引用。
郵政民営化は米国の国益に 今回の解散・総選挙をどう見ればいいのか。識者に聞く。<政治評論家・森田実氏に聞く> アサヒ・マイタウンズ(8/12)http://mytown.asahi.com/tokyo/news01.asp?kiji=4003
——小泉首相がいう郵政民営化の真の狙いは、何なのでしょうか。
「小泉さんは郵政民営化は自分の信念だと言いますが、その根っこに一番重要な日米関係があることを隠し続けていますね。米国政府が毎年、日本政府に突きつ けてくる『年次改革要望書』の存在をご存じですか。93年の宮沢首相とクリントン大統領の日米首脳会談で決まり、翌年から始まった。米国の国益にとって都 合の悪い日本の制度、法律の変更を迫る要望書です。日本のこの10年間のあらゆる構造改革の、いわばバイブル。米国政府の最後の大きな要求が郵政民営化な のです」
——米国の圧力?
「小泉さんがやりたいことと米国の 利害が一致しているんですよ。クリントン大統領が米国の財政難を救うために、日本の郵政民営化に目をつけたんですね。法案が提出されたとき、米国のウオー ル街は大変だったそうです。『郵政公社の覆いが取れ、巨額マネーが世界のマーケットに流出してくる』と。郵貯・簡易保険の340兆円は国民がつめに火をと もすようにためた金です。郵政民営化は日本国民の利益になると小泉さんは言いますが、米国ファンドのごちそうになるだけだと、私は見ています」
——総選挙で与党は勝てますか。
「小泉さんは『与党で過半数を取れなかったら退陣する』と大見え切りましたが、そこには数字のトリックがありますね。衆院の過半数は241。解散時の自公 与党の議席は283で、そこから自民の造反議員37を引いても、過半数を5議席も上回っている。何のことはない、現状維持でいいんですよ。無所属で立って 当選した造反議員を入れていけば、勝利の幅がどんどん広がります」
——選挙後は。
「勝利すれば、小泉さんは郵政民営化法案の修正案を国会に出すでしょう。しかし、それよりも重要なのは、首相の乱暴な政治手法が国民に支持され、承認され たということになる。議会を、党を、民主主義を無視していい。『小泉対国民』なんだと。ヒトラー以上の強権小泉独裁体制が誕生します」
——民主党の政権交代の可能性は。
「民主が勝つとすれば、争点を『郵政民営化に賛成か、反対か』に絞ろうとする小泉さんの思惑を打ち破れるか、にかかっています。最大の争点が郵政民営化で なく増税問題になれば、小泉さんも解散も無意味になってしまう。民主は自民の分裂を突いていくしかない。解散時の議席は175。自民の造反議員の37プラ スアルファを獲得できれば、比較第1党の可能性はあります。サラリーマン増税反対がポイントになるのでは」
——投票率は上がりそうですか。
「小泉さんが『郵政解散』といっていることには、投票率を引き下げようという明確な戦略を感じますね。メディアが『総選挙の争点は郵政民営化』と大騒ぎす ればするほど、有権者はしらける。外交や景気、失業、北朝鮮、治安など重要課題は山積み。戦後60年の節目の総選挙です。21世紀の日本をどんな社会にし ていくか。争点を郵政民営化だけに絞ろうとするのは、あまりにも国民を愚弄ぐろうしていると思いますよ」
--以上、引用おわり。
もし、郵政公社に改革するべき問題があるとするならば、役人や官僚の不当な権益を見直すシステムを構築すれば良いのであって、「民営化」に持って行くこと自体が不自然だ。
日本の「公的なもの」を潰していった果てには、あのJR西日本のような公共性よりも利益を重視した結末の事故があるのではないか。失ってはならない公共性というものがあるのではないか。戦後60年の間に、自由の名の下に公共性がことごとく壊されてしまい、そのツケが病みきった現代社会を構築してしまった。
自分のJR西日本の記事と同様、小泉首相と自民党執行部のやり方を見ていて感じるのは、これもまた明らかな「いじめ」である。これまでは、「色んな意見があっていい」と言いながら、最後の最後で反対意見の仲間を切り捨てる。自分に反対した人間に対する、徹底的な「嫌がらせ」。これらは、反対論者を政治家として抹殺しようとする行為である。
小泉首相は、「イメージや雰囲気」に基づいた人気と、無党派層の「しらけ」を頼りにしている。いわゆる「刺客」と言われる反対議員潰しの候補者には、女性が多い。これもまた女性を馬鹿にした手法ではないか。
しかしながら、こうした「イメージや雰囲気」だけで、根底にある「いじめ」に気付かず、「改革」というスローガンに見事に騙されている世の中を見ると、もう絶望的である。
10年ほど前、ある校長が「学校のいじめって無くならないのかなあ」と呟かれた。自分は「無くなるわけがありません。教員同士でいじめがあり、会社組織だろうと、大学だろうと、文部省だろうといじめがあるんですから」と答えた。
こんな大人のいじめ手法を、毎日ニュースで見せられつつ、小泉支持率が維持あるいは微増していることは、教育的にも全くよろしくないことである。
ほとんどのマスコミも、小泉政治に荷担していると言ってよい。そもそも、郵政法案反対議員のことを「造反議員」と繰り返すのは止めてはどうか。そのようなイメージ操作も、小泉首相のやり方と同じである。
Posted by 奥田健次 経済・政治・国際いじめ・ハラスメント | Permalink
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